今回は(も)、少しマニアックな場所へお出かけです。
東京、北の丸公園の横にある、国立公文書館です。
公文書館とは、憲法や法律、国際条約などの原本の保存をはじめ、政治や歴史的に重要な資料や、古文書などの保管、管理を目的とするところです。
日本は欧米諸国に比べて、公文書を少しないがしろにしているのでは?というような指摘もあります。その点の重要なところも書きたいのですが、本稿ではスルーします。
国立公文書館へは、10年ほど前に来たことがあるのですが、アメリカの国立公文書館(アーカイブスワン)のイメージがあったせいか、こちらは規模が小さく面白みのない所(機能的に、面白みがなくていいとは、思うのですが)だなと、正直感じていました。
それが最近、「国立公文書館が面白くなってきている。一般向けになっている。」というような話を聞くようになり、また「ようこそ地獄 たのしい地獄」という企画展をやっていると聞き、約10年ぶりに来てみました。
※ようこそ地獄 たのしい地獄 企画展の開催期間は、2016年7月16日〜8月27日
入り口に、企画展の看板と地獄の鬼たちを撮る撮影ポイントもありました。たしかに以前のような硬いイメージとは少し変わったような。
入ってみて、またビックリ。観光地によくあるような、顔出しパネルまであります。国立公文書館で、地獄の顔出しパネルで記念撮影ハイ、ポーズ!なんて、一昔前までは本当に考えられなかった気がします。
基本展示
さて、今回の地獄の企画展は少し後回しに、基本展示を先に見に行きます。どれも最重要なものばかりのためか、展示資料は複製が多いですが、なかなか見られる機会はないと思います。
ちなみに、展示資料の写真撮影は基本的に撮影可になりました。どれも撮影するには少し暗い気もしますが、フラッシュは不可です。
日本国憲法(昭和21年)
最近、憲法改正について何かと話題ですが、その日本国憲法の公布原本(御署名原本)です。「朕は、日本國民の總意に基づいて〜(中略)帝國議會の議決を経た〜(中略)公布せしめたる」とあり、昭和天皇の署名、吉田茂首相はじめ各大臣の副署が続きます。戦後すぐの昭和21年公布とはいえ、「朕は」「帝國議會」「せしめたる」などの表現に時代を感じます。昭和27年のサンフランシスコ平和条約の公布書では、「朕」などの表現は使われず、終わりも「ここに公布する」というように表現が変わっていくのも、興味深いです。
関東大震災の、帝都復興ニ関する詔書(大正12年)です。
震災後の混乱時には、東京はもうダメで、遷都するのでは?というような噂まで広がったようです。それに対し混乱を沈めるため、この詔書の中には、「東京は帝國の首都」、「我が国都」としての地位は失っていないと書かれているようです。ちなみに大正天皇(嘉仁)の署名の横に、この前年(大正11年)に摂政に就任した、後の昭和天皇(裕仁)の署名も見えます。
オリンピック東京大会の準備等のために必要な特別措置に関する法律(昭和36年)
オリンピック東京大会(リーフレット)(昭和38年)
文部省発行の東京オリンピックのリーフレットまで、保存されています。リーフレットに、東京オリンピックの時に歌われた「この日のために」という楽譜も見えます。
東京五輪音頭は知っていましたが、この曲は知りませんでした。
平成の書(昭和64年)
当時の竹下内閣の小渕恵三官房長官が発表しました。これは、自分も小学校に上がる前でしたが、テレビで見た記憶があります。
さて、まだまだ紹介したいものも多々あるのですが、なかなか地獄に行けないので(笑)、基本展示はこの辺で終わりにします。
企画展
さて、今回開催されていた、地獄の企画展です。
そもそも、なぜ国立公文書館で地獄の企画展?と少し違和感を感じます。江戸時代、将軍や幕府のための書庫であった江戸城内の紅葉山文庫や、昌平坂学問所(湯島聖堂)の古書や古文書を、国立公文書館では引き継いで保存しています。そのため、その中から地獄に関しての資料を集めて、今回企画展としたそうです。
この企画、夏休み中に開催されているからというのもあるかもしれませんが、子供向けの解説パネルもありました。実際に、来場者の中には、小学生を連れた親子もちらほら。一生懸命メモをとっていた子は、自由研究の調べ物にでもするのでしょうか。小学生で国立公文書館で自由研究の調べ物とは、とても素晴らしいですね。
日本霊異記
有名な日本最古の仏教説話集です。善業善果、悪業悪化(善い行いは善い結果。悪い行いは悪い結果。)を不思議な話や怖い話、ちょっと大人な話を通して学べます。
水木しげる先生が、日本霊異記の中からオモチロイ(原文ママ)と思った7話を、水木しげる流に漫画化した本もあります。原作にはない、鼠小僧とかも出てくるのですが、個人的には、おすすめですw。
源氏供養表白
「源氏物語」を書いた紫式部は、人々を惑わせたということで、地獄に落ちたとされたそうです。その紫式部を供養するための表白分。この資料自体も大変貴重で、徳川家康に仕えていた儒学者林羅山が所蔵していたものだそうです。
ギャラリー・トークの日もあります。学芸員さんが企画展の見どころ等を、わかりやすく解説してくれました。参加者も多く、時間を分けて2回開催していました。
解説の後に、子連れのお母さんと思われる方が「なぜ鬼のパンツはトラのパンツなんですか?」という質問をして、学芸員さんが「鬼の出入りする方角の鬼門は、丑寅の方角だからという説もあるのですが、よくわかっていないんですよー」というような回答をされていました。勉強になりますw。
道成寺絵詞(どうじょうじえことば)賢学草子
3歳娘は、有名な安珍 清姫伝説の、安珍を追いかける大蛇に化けた清姫に強く惹かれたようです。
子供向けに、塗り絵や地獄の絵を書いてみようというコーナーもありました。
出来上がって地獄BOXに投函すると、後日もしかしたらスクリーンに映してもらえるかもとのことです。
またスクリーンでは、子供向けのパズルもできます。
農民解放記念
戦後の農地改革を、人々にわかりやすく伝えるために作られたポスターだそうです。
親子共に、とても楽しみながら大変勉強になりました。これからも魅力的な企画展を期待しています。
地獄からのお届け物
しばらくたってから我が家に、娘の名前宛で、大きな封書で、発送元がどこにも書かれていない、かなり怪しい大きな封書が届きました。
何かの怪しい勧誘か?
日頃うるさい娘へ、近所からの匿名の注意か??
それとも何かの脅迫か???
と、恐る恐るあけてみると
国立公文書館から、先日、描いた地獄の塗り絵が入っていました。
娘に「地獄の塗り絵が、このあいだ行った国立公文書館から届いたよー」と言うと
娘は「地獄から届いたんだね!」と言いました。
あ、なるほど!!
だから発送元が書かれてない?のですねー??
国立公文書館 National Archives of Japan
月〜土曜 9:15〜17:00
東京メトロ東西線 竹橋駅下車 徒歩5分
入館無料
企画展「ようこそ地獄 たのしい地獄」
2016年7月16日〜8月27日