お出かけいく

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子どもと、お出かけ行く(育)。30代パパによる、子供に何事もリアルに体験させてみようという試み。

春のうららの隅田川〜♪ 滝廉太郎作曲、武島羽衣作詞「花」を現代語訳してみる

「春のうららの隅田川〜♪」

隅田川の美しい情景を歌った滝廉太郎作曲武島羽衣作詞の「

現代人には少し難しい文語体でつづられています。

大人でも、「春のうららの隅田川〜♪」までは意味がわかってもの、それ以降の意味が少しわからなかったりもします。

我が家も、よくお出かけする隅田川。

「のぼりくだりのふなびとってどういう意味?」と子供に聞かれたので・・・

今回は、滝廉太郎作曲、武島羽衣作詞「」を、現在の隅田川界隈で撮影した写真を少し織り交ぜて、ちょっと真面目に現代語訳してみたいと思います。

 

f:id:odekakeiku:20170413070709j:plain隅田公園「花」の歌碑 碑面は武島羽衣の自筆を書を刻したもの

 

1番 春のうららの〜

春のうららの 隅田川

のぼりくだりの 舟人ふなびと

かいのしずくも 花と散る

ながめを何に たとうべき

  • うらら・・・日が柔らかく照っている様子。
  • 隅田川・・・荒川から分岐し、北区の岩淵水門から東京湾河口までの全長約23.5キロの一級河川。現在は東京都が管理し、流域人口は300万人に達するともいわれる世界に類を見ない都市河川。別名、宮戸川、大川、浅草川など。
  • のぼりくだり・・・(隅田川を)のぼったり、くだったり行き来する(船)。

f:id:odekakeiku:20170403181332j:plain隅田川をの行き来する、水上バス 佃大橋付近

  • 舟人ふなびと・・・船頭、船をこぐ人。
  • 舟人・・・主格の「が」ではなく、「〜の」を意味する助詞。
  • かい・・・船を漕ぎだす木の道具。オール。

f:id:odekakeiku:20170403173121j:plainカッターのオール(隅田川下流、豊洲運河付近での練習風景)

 

f:id:odekakeiku:20200530163242j:plain墨田区すみだ郷土文化資料館の展示より。実際はこのような形のものを言っていたと思われます。

  • しずく・・・(漕いで泡立つ)水滴。
  • たとうべき・・・「べし」の連体形、推量(〜だろう)当然(〜べきだ)。

     

1番 意訳

春のおだやかな陽気の隅田川

川をのぼったり、くだったりと行き来する船の船頭さんの

櫂につく水滴も まるで花のように散る

この素晴らしいながめを、いったい何にたとえたらいいでしょう

 

 

2番 見ずやあけぼの〜

見ずやあけぼの つゆあびて

われにもの言う 桜木さくらぎ

見ずや夕ぐれ 手をのべて

われさしまねく 青柳あおやぎ

  • 見ずや・・・「見」マ行上一段活用、「ず」打消(〜ない)、「や」反語(〜か〜ない)⇨「見ないのですか?いや見るでしょう」「ごらんなさい」。
  • あけぼの・・・夜明け、明け方。

f:id:odekakeiku:20170408083923j:plain 隅田川の夜明け

  • ものいう・・・話す、言う。
  • 桜木さくらぎ・・・桜の木。「花は桜木、人は武士」

f:id:odekakeiku:20170413070144j:plain雨上がりの朝 露をあびた桜

  • 手をのべて・・・手をのばして。
  • さしまねく・・・手招きする。手で招く。
  • 青柳あおやぎ・・・青々と葉を付けた柳。

f:id:odekakeiku:20171026062334j:plain隅田川 永代橋付近の青柳

 

2番 意訳

見てごらんなさい 夜明けに露をあびて

私に話しかけるような 桜の木を

見てごらんなさい 夕暮れに手を伸ばして

私をまねいているような 青い柳の木を

 

 

3番 錦おりなす〜

にしきおりなす 長堤ちょうてい

暮るればのぼる おぼろ月

げに一刻いっこくも 千金せんきん

ながめを何に たとうべき

  • 錦おりなす ・・・華やかに織られている錦のように、美しい花や紅葉のたとえ。
  • 長堤・・・長く続く堤、長く続く土手。

f:id:odekakeiku:20170413065534j:plain春の隅田川の堤防 言問橋付近

  • 暮るればのぼる・・・日が暮れれば、のぼってくる
  • おぼろ月・・・雲や、もやのかかった霞んでいる月(春の季語)。

f:id:odekakeiku:20170411071557j:plainおぼろ月と満開の桜

  • げに・・・本当に、いかにも。
  • 一刻も千金の・・・中国北宋時代の詩人、書家の蘇軾そしょくの「春宵一刻直千金」(春夜より)の引用で、「少しの時間でも千金にあたいするくらい価値がある」。

 

3番 意訳

錦を織ったように花々が咲き乱れる 堤防に

日が暮れるとのぼる おぼろ月 

 ほんのひと時も、まさに千金にも値する

この素晴らしいながめを、いったい何にたとえたらいいでしょう

 

 

昔は川底も見えるほど綺麗だった隅田川

 自分が子供の頃(30年程前)、隅田川を通ると時折悪臭がしていたので「花」の歌詞にあるように、そんなに隅田川って綺麗?と思っていました。

しかし、少し古い本などを読んでいると、江戸〜昭和初期くらいまでは、水質も良く川底も見えるほど綺麗な水質だったそうです。

鬼平犯科帳シリーズなどの時代小説で著名な作家の池波正太郎は、母の思い出の中で、以前の綺麗な頃の隅田川についてこう書いています。

母が私を産んだころの、大川(隅田川)の水は清らかで、父方の祖父が、

「よく沙魚(はぜ)を釣って来なすった」そうだが、

おそらく鰻や小さな鰈(カレイ)も釣れたにちがいない。

大川を対岸へ渡るには竹屋の渡しとよばれた渡し舟に乗ったわけで、

「雪の朝なんか、何ともいえないほど景色がよくて、広重の錦絵を見ているようだった・・・・・・」

と、母はいっていたが、おそらく、そのとおりだったろう。

新潮文庫「江戸切絵図散歩」池波正太郎著  ( )の注、読み仮名は管理人が加筆

江戸切絵図散歩 (新潮文庫)

江戸切絵図散歩 (新潮文庫)

 

 ところが、戦後の高度経済成長期に大量の工場排水、生活排水が流れ込み、また無機質で味気のないコンクリートの堤防が築かれて「花」に歌われるような美しい情景がいつしか失われつつありました。

現在は、少しづつですが水質も改善され、環境に配慮し緑化された堤防などの整備もすすみ、以前の美しさを取り戻しつつあります。

f:id:odekakeiku:20170626184256j:plain荒川区南千住汐入公園付近

その甲斐もあってか、悪臭も減り、ジョギングや散策する人、水上バスなども盛んに行き来するようになりました。

滝廉太郎の美しいメロディもさることながら、武島羽衣による古き良き隅田川の情景を幻想的に思い起こさせる大変素晴らしい歌詞です。

 

f:id:odekakeiku:20170407065043j:plain隅田川を下る水上バスより清洲橋を望む

「花」に歌われている美しい情景を思い浮かべながら、隅田川散策や水上バスに乗って少しお出かけしてみるのも良いかもしれませんね。

 

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